過去のコラムより
06.1.24
アスベストの被害が明らかになってきている。ヒュース・テンでも
こんなことがあった。技術の人と二人で関西のある陶芸家のところに
エレメント交換に行った時のこと。
出張交換の依頼の電話を受けて、
「そちらでは以前窯にセラミックファイバーを巻いていらっしゃい
ましたよね、、、」と言いかけると
「あ、はずしておきます、はずしておきます」との答え。東京からの
日帰り仕事なのですぐに仕事にかかれるよう配慮してくれたのかな、
と思って電話を切った。
当日、そこに伺うと、まだ窯のまわりにはセラミックファイバーが
まいたまま。ふたのところだけ針金を外してある。窯を分解して
エレメント交換をするので、技術の人が巻いてあるセラミック
ファイバーを外していたら窯のオーナーが、
「これってアスベストですかね、セラミックファイバーでしょうか」と聞く。
「さあ、アスベストはテレビでしか知りませんが、セラミックファイバー
じゃないですか?以前使っていらしたのですよね」と私。
さわってこすったりつぶしたりしてみたがよく分らない。アスベストは
見た事がないのだし。セラミックファイバーよりちぎれやすくふわっと
している気がしたがまあ古いからだろう。
何年も前、アメリカの窯をそのまま持ってきたが温度が上がらない、
どうしたら良いか、と問い合わせを受けた時に、改造には費用がかかる
ので、低温焼成をするだけならセラミックファイバーでも巻いたら
多少違うのでは?とアドバイスをしていた。
その後新しい窯をうちから買ったので温度は十分上がるはずだが、
とってあったのを使ったのだろう。
技術「もう10年以上前からアスベストなんて買えないと思いますよ、
禁止されていますから」
オー ナー「いやあ、○○(陶芸用品の会社)に電話したらすぐ送って
きましたよ。簡単に。それに、うちでは叔父が退職する前大量に
アスベストもらっておいた んです。叔父が勤めていたのはあの、
騒がれているクボタなんですよ。溶鉱炉にまだ沢山使ってましたから。
私なんかもうそれを沢山吸い込んでいますよ」
私「、、、?」
吸い込んでも影響が出る頃にはもうこの世にいないかもしれないし、、と
冗談を言ってその人は家の中に引っ込んでしまった。
今の会話からすると、その大量にもらったというアスベストはどうしたの
だろう。○○から買ったというアスベストの行方は?
その陶芸家はゴム手袋をしてつなぎを着てゴム長をはいていた。最初、
どうしてこんなかっこうをしているんだろう、と一瞬不思議に思ったが
すぐ忘れて作業を始めていた。
私にバッグを玄関に入れるように言ってくれたけれど私はファイルが
入っているので窯のわきに置いたまま。
セラミックファイバーのちぎれたかけらがまわりに飛んでバッグの中にも
入り、服も手も髪の毛にもかかっている。
新しいエレメントを張る前に私たちは、持って行った掃除機で窯の中を
きれいにする。
小さな掃除機の排気口が窯の中の空気をかき回し、ちくちくするセラミック
ファイバーが顔中に当たる。吸い込む。
窯の中にも外にもちぎれて綿のようになったセラミックファイバーが
沢山あったが、窯の底に敷いてあるのは保温の為だろうと思い
そのまま残し、仕事を進めた。
クボタからもらったアスベストは?いとも簡単に送ってきた、という
○○のアスベストは?どうも、いつも私はすぐには気がつかない。
後から疑問が湧いてくる。
その次にその人が玄関から出てきた時、「○○から買われたアスベストは
どうなさったんですか?」と聞いた。
「そこに巻いてあるのがそうですよ。叔父からもらったのも一緒に(!)」
えっ?私たちがセラミックファイバーと寸分も疑わずに素手で取扱って
いたのはアスベスト?
そこまで言われてもまだ私は半信半疑だった。
そうなら、何故、私たちにこれはアスベストと思うか、それとも
セラミックファイバーか、と聞いたのだろう。アスベストと判っていたのに?
事情を把握していたら、東京から防塵マスクを準備し、着替えの服を持ち、
十分な用意をして出かけてきたのに。
作業も、窯の空気をかき回すことや周囲に散らすことを極力避けて
注意して進めることが出来ただろう。
今もってその人が何故私たちにアスベストかセラミックファイバーかと
聞いたのか判らない。きっと自分でもアスベストと判っていながら、
どこかでそうでない、と思いたかったのだろうか。または、私が
セラミックファイバーと思い込んでいたので言い出せなかったのだろうか。
私たちは帰り、コンビニに寄って手や顔やTシャツの肩まで洗った。
持っていたタオルもそういえばアスベストが沢山ささっているのだった。
着替えもなくシャツをぬいで叩くわけにもいかない。バックの中もざらざらだ。
技術の人は何も言わなかったが、私は健康にリスクを負わせてしまったことで
申し訳ない気持ちでいっぱいだった。まさかアスベストにふれるなど夢にも
思わなかったがそれは言い訳にはならない。不注意だった。
その陶芸家は私たちに対して人間的に誠実でなかった、と思う。けれど
お客様であることには変わりない。うちの電気窯を使っている限り
窯についての質問や疑問があれば自分で判断せずにうちの技術にきちんと
聞いて欲しい。安全に使って欲しいから。部品の補充もあるだろう。
ということでこの出来事は勉強になった。出張の時はもっと注意して、
何事にも対応できるような準備をすること。それにほんの少し前まで、
アスベストは身の回りにごくありふれて使われていたのだと実感した。
すでに所有している人は捨てる事も出来ず途方にくれているかもしれない。
現在使われているアスベストをどうすれば良いのか。個人の力では
対処しきれないことを、政府は堀江さんいじめよりも早急に真剣に考えて欲しい。
06.1.24
アスベストの被害が明らかになってきている。ヒュース・テンでも
こんなことがあった。技術の人と二人で関西のある陶芸家のところに
エレメント交換に行った時のこと。
出張交換の依頼の電話を受けて、
「そちらでは以前窯にセラミックファイバーを巻いていらっしゃい
ましたよね、、、」と言いかけると
「あ、はずしておきます、はずしておきます」との答え。東京からの
日帰り仕事なのですぐに仕事にかかれるよう配慮してくれたのかな、
と思って電話を切った。
当日、そこに伺うと、まだ窯のまわりにはセラミックファイバーが
まいたまま。ふたのところだけ針金を外してある。窯を分解して
エレメント交換をするので、技術の人が巻いてあるセラミック
ファイバーを外していたら窯のオーナーが、
「これってアスベストですかね、セラミックファイバーでしょうか」と聞く。
「さあ、アスベストはテレビでしか知りませんが、セラミックファイバー
じゃないですか?以前使っていらしたのですよね」と私。
さわってこすったりつぶしたりしてみたがよく分らない。アスベストは
見た事がないのだし。セラミックファイバーよりちぎれやすくふわっと
している気がしたがまあ古いからだろう。
何年も前、アメリカの窯をそのまま持ってきたが温度が上がらない、
どうしたら良いか、と問い合わせを受けた時に、改造には費用がかかる
ので、低温焼成をするだけならセラミックファイバーでも巻いたら
多少違うのでは?とアドバイスをしていた。
その後新しい窯をうちから買ったので温度は十分上がるはずだが、
とってあったのを使ったのだろう。
技術「もう10年以上前からアスベストなんて買えないと思いますよ、
禁止されていますから」
オー ナー「いやあ、○○(陶芸用品の会社)に電話したらすぐ送って
きましたよ。簡単に。それに、うちでは叔父が退職する前大量に
アスベストもらっておいた んです。叔父が勤めていたのはあの、
騒がれているクボタなんですよ。溶鉱炉にまだ沢山使ってましたから。
私なんかもうそれを沢山吸い込んでいますよ」
私「、、、?」
吸い込んでも影響が出る頃にはもうこの世にいないかもしれないし、、と
冗談を言ってその人は家の中に引っ込んでしまった。
今の会話からすると、その大量にもらったというアスベストはどうしたの
だろう。○○から買ったというアスベストの行方は?
その陶芸家はゴム手袋をしてつなぎを着てゴム長をはいていた。最初、
どうしてこんなかっこうをしているんだろう、と一瞬不思議に思ったが
すぐ忘れて作業を始めていた。
私にバッグを玄関に入れるように言ってくれたけれど私はファイルが
入っているので窯のわきに置いたまま。
セラミックファイバーのちぎれたかけらがまわりに飛んでバッグの中にも
入り、服も手も髪の毛にもかかっている。
新しいエレメントを張る前に私たちは、持って行った掃除機で窯の中を
きれいにする。
小さな掃除機の排気口が窯の中の空気をかき回し、ちくちくするセラミック
ファイバーが顔中に当たる。吸い込む。
窯の中にも外にもちぎれて綿のようになったセラミックファイバーが
沢山あったが、窯の底に敷いてあるのは保温の為だろうと思い
そのまま残し、仕事を進めた。
クボタからもらったアスベストは?いとも簡単に送ってきた、という
○○のアスベストは?どうも、いつも私はすぐには気がつかない。
後から疑問が湧いてくる。
その次にその人が玄関から出てきた時、「○○から買われたアスベストは
どうなさったんですか?」と聞いた。
「そこに巻いてあるのがそうですよ。叔父からもらったのも一緒に(!)」
えっ?私たちがセラミックファイバーと寸分も疑わずに素手で取扱って
いたのはアスベスト?
そこまで言われてもまだ私は半信半疑だった。
そうなら、何故、私たちにこれはアスベストと思うか、それとも
セラミックファイバーか、と聞いたのだろう。アスベストと判っていたのに?
事情を把握していたら、東京から防塵マスクを準備し、着替えの服を持ち、
十分な用意をして出かけてきたのに。
作業も、窯の空気をかき回すことや周囲に散らすことを極力避けて
注意して進めることが出来ただろう。
今もってその人が何故私たちにアスベストかセラミックファイバーかと
聞いたのか判らない。きっと自分でもアスベストと判っていながら、
どこかでそうでない、と思いたかったのだろうか。または、私が
セラミックファイバーと思い込んでいたので言い出せなかったのだろうか。
私たちは帰り、コンビニに寄って手や顔やTシャツの肩まで洗った。
持っていたタオルもそういえばアスベストが沢山ささっているのだった。
着替えもなくシャツをぬいで叩くわけにもいかない。バックの中もざらざらだ。
技術の人は何も言わなかったが、私は健康にリスクを負わせてしまったことで
申し訳ない気持ちでいっぱいだった。まさかアスベストにふれるなど夢にも
思わなかったがそれは言い訳にはならない。不注意だった。
その陶芸家は私たちに対して人間的に誠実でなかった、と思う。けれど
お客様であることには変わりない。うちの電気窯を使っている限り
窯についての質問や疑問があれば自分で判断せずにうちの技術にきちんと
聞いて欲しい。安全に使って欲しいから。部品の補充もあるだろう。
ということでこの出来事は勉強になった。出張の時はもっと注意して、
何事にも対応できるような準備をすること。それにほんの少し前まで、
アスベストは身の回りにごくありふれて使われていたのだと実感した。
すでに所有している人は捨てる事も出来ず途方にくれているかもしれない。
現在使われているアスベストをどうすれば良いのか。個人の力では
対処しきれないことを、政府は堀江さんいじめよりも早急に真剣に考えて欲しい。
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