渡部さんの工房。手作りの道具類が沢山。
福島の郡山市にお住まいの陶芸家、渡部功さんから窯の温度があがらないので見に来て欲しいと連絡をいただいた。渡部さんはスカットのモデル1027、三相をお使いだったが、代理店がなくなってしまったため困り果ててヒュース・テンに連絡して来られ、それ以来長いおつきあいをさせていただいている。
何年か前には、体力がなくなったのでもう少し浅い窯にしたいというご希望で2段の窯に改造した。99年に初めて連絡いただく前にすでにお使いだったのでもう15年くらいは経った窯だろう。
今回はその窯の温度が上がらないということで福島に伺った。ヒュース・テンの技術、Kさんが窯や部品、配線を点検していくがどれにも問題がない。だが、大元の電源を調べると三相の窯なのに3本のケーブルのうちひとつに電圧が来ない。電源に100Vしか来ていないのだ。
これはもう窯側の問題ではない。壁から外の電力会社側に原因がある。東北電力に連絡するとすぐやって来てこちらの説明で電柱を調べてくれる。案の定電柱から渡部さんの工房に来ているケーブルのヒューズが一個切れている事がわかった。他も劣化しているので3つとも交換します、と言ってくださる。
道ばたの電柱にヒューズがあるなんてほとんどの方はご存じないだろう。電柱が近くて良かった、それに東北電力にすぐに対応してもらえてありがたい。窯は元通り、温度も上がり無事に作業を終えた。
窯の問題ではなく、電柱や電源、電気会社に原因があることが少なくない。こういう事態はやはり電話だけのやりとりではわからないだろう。来て良かった、と改めて思う。
ところが3ヶ月経たずにまた温度が上がらない。期せずして地震後の工房に2度おじゃますることに。今度はエレメントが一本切れていた。「年だから新しい窯を買っても仕方がないか、、」とおっしゃるが、窯をきれいに使っておられるのでエレメントやリレーなど部品を替えればまだ立派に使える。
ところで渡部さんは今年11月で満90才になられた。3月11日の東北大震災の時は工房で仕事をしておられ、作品はほとんどが破損したということだが、それでもまた工房で仕事を再開された。殆ど毎日作業しておられるという。
郡山市に移られる前は会津で本郷焼き窯元でろくろ師をされていた。最初は2ヶ月しかろくろの経験がないのにいきなり陶芸工房でお客さんに見せるためのろくろ挽きをした、という。酔客相手では良かったがたまに陶芸をしている人が来て技術的なことを聞かれると弱った、とおっしゃる。
それから40年、今も作りたい形、アイディアを沢山お持ちで、豊かな時間を過ごしておいでだ。
静かな佇まいの器たち。
工房での渡部さん。毎日颯爽と作陶に励んでおられます。
本焼きを待つ花生けと水滴。60-70点を一枚の棚板で焼成します。一窯で大量の作品を焼かれます。
改造365 スカット1027をヒューステンで2段に改造。使い易くなりましたがボックスを再利用したのでちょっとぶかっこうです。エクセルキルンのEX344に相当します。
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