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森風園の森さん |
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ハーネスを腰に、ロープ片手に |
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ほぼ仰向けの姿勢で枝を切る |
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丸の中に二人が見え隠れする、青い空と。 |
空師(そらし)という美しい名で呼ばれる職業をご存知だろうか。
文字通り空高く聳える木に登って仕事をする人のことだ。
ハーネスと呼ばれる安全器具をつけ、ロープ一本で体をつないで高所の木の伐採をする。
「動物的ともいえる天性のバランス感覚と度胸が、空師に求められる大きな素質」と言われるゆえんだ。
その仕事を間近で見る機会を得た。ヒュース・テンのスタッフの家で大木の松の手入れが行われたのだ。
空師で庭師。両方のできる数少ない造園屋さんだ。ハーネスを身に着け、ロープ片手にスルスルと松の大木に登っていく。屋上のベランダからさらに高く伸びる赤松なので
木の高さは優に12,3メートルを超えるだろう。
以前頼んだ造園業者では、職人さんが木の剪定をしている間、親方が「どうやって切るかなあ」と一日腕を組んで考え、アイディアが浮かばず結局目的の松に手を付けずに終了してしまった苦い経験があるという。しかも「考えていただけの」一日分も入れて職人3人2日分の請求をされたとのこと。
そこで20年以上前に依頼したある造園会社とその担当者のやりとりの記録を探しだして、ようやくたどりついた電話番号から担当者と思われる人に、聞いたそうだ。どこどこの〇〇と申しますがはるか昔に松を切っていただいたことがあるでしょうか、と訪ねると、ああ、僕と思いますよ、という返事が返ってきた。そんなこんながあって、彼とその友人の造園屋さん(その名もまた美しい森風園という!)に松を含む木の手入れをお願いすることになったのだ。
その日。大きな梯子を松にかけ、その先はロープを持ってするすると腰紐と岩登りのような金具(ハーネス)をぶら下げた装備で登っていく。大手の建築現場ではこのような「丸腰」は許されないそうだ(そういうところからも依頼があるということだろう)。でも個人宅や神社など、狭い現場での高所にはこの技術は必須だ。
梯子から上はロープと足だけで登っていく。すぐに姿は見えなくなり、こことここに二人がいるらしい、ことが分かる。
二人には迷惑かもしれないが、ずっと見ていたい、青い空をバックに、実に惚れ惚れとする姿だ。松の大枝に見え隠れする二人の姿とその手際の良さ。登るとしばらくは降りてこない、そして一人が降りてくるとまだ松の上にいる一人に、そこをもう少し空いてもいいなあとか、もう少し先をとか感想を言う。チームワークの取れた作業を見ていると見ている方も気持ちが良い。会社の仕事もこんな風に進んだらいいなあとふと思う。
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